覚せい剤事件の弁護について
事実関係については特に争いがないため,1回の公判期日において,冒頭手続から
検察官の立証を経て,弁護側の立証,論告・弁論まで行った上で結審し,次回期日に
判決言い渡し予定となりました。
刑事事件の公判については,殆どが公訴事実(起訴された犯罪事実)には争いがない
自白事件であるため,基本的には1回の裁判で審理を終えた後,2回目の公判で判決
言い渡しとなることが多いです。
もっとも,自白事件であるからと言って事はそう単純ではなく,弁護人としては,被告人
の情状弁護として,具体的にどのような立証活動を行うのか悩むことになり,例えば,
覚せい剤の事件であれば,被告人が,いつ頃から,どのような経緯・理由から覚せい剤
を使用し,どうすれば辞められるのかを一緒に考えていくことになりますが,覚せい剤
を使用するに至る背景には様々な心理的・社会的要因があり,心の問題とも大きく
絡むため,本当に悩ましい問題です。
一般によく知られているように,覚せい剤は,それ自体に強い依存性を生じる薬理作用
があるため,一度使用してしまうと,タバコと同じようになかなかやめることができず,
使用が習慣化しやすい傾向があり,また,どうしても人に迷惑をかけているという自覚に
乏しいこともありますので,完全に使用習慣を絶つためには一朝一夕にはいかず,
病院での継続的な治療やカウンセリングが必要となる場合もあります。
しかしながら,弁護人がいかに努力して主張・立証をしても,日本の成人の刑事裁判
において具体的な量刑を決するのは,同種の前科があるか否かであり,初犯の場合
には殆どが執行猶予になりますが,2度目からは実刑というように画一的な判断が
なされやすい傾向があり,そのため,再犯の被告人を弁護する際にはやりきれない
想いがします。
もっとも,弁護人が,被告人のために色々とあれこれ考えて努力することにより,たとえ
量刑は変わらなくても,被告人が,弁護人の活動を評価して反省の情をより確かなもの
とする場合もありますので,決して無駄ではないと思っています。
刑事弁護の問題は明確な答えがなく,また,やり方も弁護士により本当に千差万別で
あると思いますが,より効果的で被告人の更生に資する弁護活動ができるように
今後も精進していきたいと思います。