弁護士が,個人の事件として取り扱う事件の一つとして「離婚事件」がありますが,離婚事件については,他の分野
とは異なる独特の難しさがあると思います。

先ず,争点が複数存在することが比較的多いことが挙げられます。例えば,夫婦間で離婚するか否かについて意見
が異なる場合は勿論として,仮に,離婚することで合意している場合であっても,未成年の子がいる場合には,親権者
の指定をどうするのか,養育費や面会交流の問題のほか,お子さんに関することまでは合意できたとしても,財産分与
や慰謝料といった離婚給付の問題などもありますので,なかなか一筋縄ではいきません。

また,離婚事件は,例えば交通事故のような一瞬の出来事ではなく,結婚してからのある程度長い年月に亘る事実関係
を対象とするため,事実関係が長くなりやすいほか,元々,お互いに好きあって結婚したにも関わらず,不和を生じる
ような関係になるとそれが逆転して,他方配偶者に対して,感情的にも強い不満や不安を感じること等も多く,そのように
感情面も絡む問題となることが解決を遠ざけてしまう場合もあります。

その他,仮に,離婚が成立したとしても,幼いお子さんが夫婦間にいる場合には,そのお子さんが成人するまでの養育費
の支払いなども問題となりますが,養育費の支払いを約束し,実際に支払いを続けられることは割合的には多くなく,仮に
調停等で合意した場合であっても,例えば,父親が失職したり,再婚する等して,養育費の滞納がなされることもままあり
ますが,そのような場合には養育費の回収に困難を来す場合もあり,お子さんの生活困窮に直結することにもなりかねま
せんが,そのような子の貧困問題に対する法制度は未だ手薄であるのが実情です。

以上のように,離婚事件については,争点が複数であったり,長い期間の事実関係が問題となったりするほか,お子さん
の将来や生活に亘る問題等も含むため,その解決に際しては,様々な困難がありますが,個人の事件として重要な分野
であることには変わりがありませんので,そのような解決の困難性を前提としながらも,離婚という紛争が起きた場合に,
円満・妥当な解決を目指すと共に,何よりも,両親の離婚によって不可避的に影響を受けうる家族の一員であるお子さん
たちの生活や将来に対して与える負担をできる限り軽減する解決が取れるようになりたいと考えています。

沢田法律事務所