参議院選挙が6月22日に公示され,選挙戦が始まっていますが,現在の政権は主たる争点は
経済政策であると言っています。

しかしながら,実際には現在の政権が掲げる経済政策の功罪のみならず,憲法改正や安全保障
政策についても争点となるべきであると思います。

御存知のとおり,現在の政権は歴代の内閣が行使を認めていなかった集団的自衛権を憲法解釈
を変更するという方法で容認した上で,国会において,安全保障関連法を成立させましたが,
同法に反対するデモが全国各地で行われたことは記憶に新しいと思います。

しかしながら,現在の政権が容認した集団的自衛権は,現行の日本国憲法の条文を前提とする限り,
行使を認めることは難しく,仮に,行使の必要があり,それを容認するのであれば,憲法改正自体を
正面から取り上げて憲法9条を改正する必要があり,その手続きとしては,憲法96条により,原則と
して国民投票が必要となりますが,現在の政権はそれらの正当な手続きを踏むことなく,国民の大多
数の反対を押し切って安全保障関連法を成立させたという点で,憲法により国家権力に制限をかける
という立憲主義に明らかに反することであると法律家としては考えざるを得ません。

確かに,北朝鮮の問題など,安全保障上の脅威があるのは事実ですが,それらの脅威からいかにし
て国家を守るのかということは,主権者である国民の意思を最大限尊重して決める必要があり,一
内閣の独断や,国会議員の賛成のみで決定してよいことではないと思います。

そのため,愛知県弁護士会を含む全国各地の弁護士会においても,集団的自衛権行使容認に反対
するパレードなどを繰り返し行っていますが,今回の参議院選挙において,与党側はそのことには
公約でもほとんど触れておらず,これでは野党側から争点隠しであると批判されても仕方がないと
思います。

また,主権者である国民の側においても,どうしても日常生活に直結する経済政策に目が向きがちで
あることは仕方がないとしても,それのみならず,各政党が掲げる憲法に対する考え方などにも関心
を払った上で投票を行う必要があり,決して白紙委任状により委ねるようなことではいけないのだと
改めて思いました。

沢田法律事務所